中学受験には、「公立中高一貫校」と「私立中学」といった2つのタイプに大きく分けることができます。どちらもそれぞれの良さがありますが、まず「公立中高一貫校」について触れてみたいと思います。なお国立の埼玉大学教育学部附属中も前者の中学と共通部分が多いため、併せて紹介をさせていただきます。
● さいたま市立浦和中学(以下市立浦和中)
☆ 入試選抜方法と傾向
まず一次試験で候補者を240名に絞ります。一次試験では、国語・社会を中心とした適性検査Ⅰと、算数・理科を中心とした適性検査Ⅱがそれぞれ45分間ずつ行われます。問題量が非常に多く読解力を要する問題が多いため、スピーディにそして正確に問題を処理する能力が問われます。二次試験では、作文を含む国語を中心とした適性検査Ⅲと面接(グループ討論もあります)で最終合格者80名(男女それぞれ40名)を決定します。
倍率は5倍~9倍程度(これでも開校当初よりは下がっています)と高く、受検生のレベルも高いため毎年激戦の入試になっています。
近年は伊奈学園中が入試日を合わせてきたことや、大宮国際中学の開校に伴い倍率は下がっていますが、依然難関校であることには変わりありません。 なお大宮国際中学とはそれぞれの二次試験の日程が重なっているため、一次試験で両校とも受かった場合でも、二次試験日前にはどちらか1校に受験校を絞る必要があります。
☆ 学校の特徴等
・入学者は全員市立浦和高校に進学します。
・自転車通学は禁止です(高校生はOKです)。
・給食がでます。
・近年、国公立や有名私大への合格者が飛躍的に伸びています。
・高校では外部生とは別クラスで3年間学びます。
・ちなみに高校受験で同校を受ける場合は、偏差値が68前後必要になります。
● 埼玉大学教育学部附属中学(以下埼大附属中)
☆ 入試選抜方法と傾向
入試科目は国語・算数(各30点満点)、理科・社会(各20点満点)、音楽・図工・家庭科・体育(各10点満点)の合計8教科受験になります(2023年度入試は国算の2科目受験+集団討論が実施されました)。募集数は内部進学生の人数によって毎年変わりますが、近年は男女それぞれ25名~35名程度となっています(倍率は4~6倍程度)。問題量はそれほど多くなく市立浦和中に比べて問題も若干易しめですが、受験生のレベルはそれなりに高いため取りこぼしがきかず高得点が要求されます。特殊な入試形態のため模試の偏差値はあまりあてにはなりません。
☆ 学校の特徴等
・併設の高校はありません(全員受験をします)。
・高校の進学実績が抜群に凄いです。
・給食はなく毎日のお弁当が必要です。
・教育実習生が頻繁に来ます。
・内部生が全体の70%程度を占め外部生と同じクラスで授業を受けます。
● 伊奈学園中学
☆ 入試選抜方法と傾向
入試は1次試験(作文1、作文2)と2次試験(面接)になります。1次試験で、倍率を2.5倍程度(200人前後)まで絞り、2次試験で80名の合格者を出します。市立浦和中学と違って男女別の募集ではありません(例年女子の方受験者、合格者ともに多いです)。作文1は国語・社会が中心、作文2は算数・理科が中心の問題構成になっていますが、どちらも「作文」となっているように、ほとんどの問題が記述式です。事前準備をしっかりとしておかないと、慣れない形式のテストのため点数が取りにくいです。なお平成28年度入試より、市立浦和中学に入試日を合わせてきたため、両校を受験することは不可能になってきました。ただ、その分倍率は下がり入りやすくなったとも言えます。
☆ 学校の特徴等
・入学者は全員伊奈学園総合高校に進学します。
・大宮駅からニューシャトルで20分強乗り、徒歩10分かかります。
※通学路は1本道で歩道も充分な広さがあり、安心出来る方だと思います。
・昼食は基本的にお弁当になります(牛乳が出ます)。※お弁当等の販売もあり
・高校は県内一のマンモス校で、校舎及び校庭も広く総合大学並みです。
・高校には芸術系・体育系の学科もありますが、これらの学科には内部からは進めません。
● さいたま市立大宮国際中等教育学校
平成31年度開校の新しい中学です。この学校が市立浦和中や伊奈学園中と大きく違うところは、高校からの募集が一切ないというところです。そして、英語教育に力を入れ(入試科目にも英語が入ります)、グローバルな人材を育成していくということが基本方針になっています。授業内容も入試日程については、1次試験は市立浦和中及び伊奈学園中の2校とは別日程ですが、2次試験は市立浦和中と同じ日程になりますので、これらの中学の受験も考えられている場合は、出願校の作戦も必要になってくるでしょう。
それぞれの魅力について
この4校に共通していることといえば、ずばり「授業料がかからない」ということです。私立中学の場合、入学金と授業料だけで年間80~100万前後かかります。これが無料になるのだからこれは非常にお得です。
その他の魅力については各ご家庭の価値観等によっても大きく変わります。例えば埼大附属中は併設の高校がありませんが、だからこそ必死にがんばって有名高校へ多くの生徒が進学しているという見方もできます。
上記の4校の受験に有利なお子さんとは・・・
① 自分から「受験をしたい」と言っている。
これは大前提です。もちろん受験のきっかけ作りをしてあげるのは保護者の方で構いません。しかし、本人の意志なく親の希望だけで受験勉強をさせてもうまくいきません。
② 読書が好き。
低学年から塾に何日も通うよりも、本をたくさん読んでいる子の方が将来的には伸びる場合が多いです。特にこの4校については、私立中学受験以上に今まで培ってきた読書力がものをいいます。但し6年の後半になると、受験勉強の傍らそんなに読書に時間を費やすことが難しくなってきます。できるだけ早いうちに読書に親しんでおくことが大切です。
③ 学校生活を大切にしている。
授業を大切にすることはもちろんのこと、クラブや係の活動などすべてにおいて積極的かつ協調性を持って臨んでいくことが大切です。これは私立中学難関校入試と少し違ってくるところです。
④ 苦手教科を作らない。
特に埼大附属では全体での高得点が要求されるため、音楽や図工なども着実に点数を取って行かなければなりません。幸いそんなに難しい問題ではないため、学校の勉強をしっかりとこなしていくことが大切になります。
⑤ 「勉強しなさい!」と週に2回以上親から言われない。
つまりそれだけ勉強が好きな子でないと入試突破は難しいということです。勉強をやらされるのではなく、自ら進んでやるという方向に持っていけるかどうかが大切です。
受験の動機として相応しくないものはどれ?
① 友達が受験をするから。
② 地元の中学に行きたくないから。
③ 高校受験で苦労をしたくないから。
① 全く問題ありません。きっかけなんてだいたいこんなものです。
② これも問題ありません。「地元の中学もいいけれど受験もしてみたい」という方が理想かもしれませんが、現にこのような理由で受験に成功してきた子たちを今までに何人も見てきています。
③ この考えは非常に危険です。私立中学の場合も含めて、レベルの高い生徒が多数集まっている中での勉強はそれなりに大変です。また、一般的には中学受験の方が高校受験よりも遥かに大変です。楽をしたいのであれば高校受験からで十分でしょう。ちなみに埼大附属には高校はありません。
セレクト学院の受験指導とは…
まずは入塾前にご家庭のお考えをお聞きします。もともと中学受験というのはしてもしなくてもいいものですので、中学受験ありきという考えは私どもには全くありません。なかには「今のところ受験は考えてないけど、実力がついたら受けるかも…。」といったご家庭もありますがそれはそれでいいと思っています。
入塾前には体験授業を受けていきますが、ここでのポイントはお子さん自身が「がんばってみたい」と思うかどうかです。いやいや入っても効果は出づらいものです。
入塾時には受講回数や科目その他詳細の打ち合わせをします。こんなことを書くとびっくりされるかも知れませんが、私は週に1~2回の受講回数で十分だと思っています。それは、埼大附属も市立浦和も「授業料が無料」というところに大きな魅力があるわけです(もちろんその他にもたくさんの魅力があるのは先刻書いたとおりです)。この魅力ある学校に入るために年に多額の授業料を塾に払うことに抵抗を覚えるわけです。週に1~2回では少ないと思われるかもしれませんが、当塾には「演習」とういうシステムがあります。これは塾とご家庭で決めた時間にお子様が来て勉強をするものです(演習中は先生が巡回しますので、いつでも自由に質問ができてしかも何時間いても無料です)。現在でも受講回数は週に1回だけで、その他ほぼ毎日演習に来ているという生徒が何人もいます。このような形式でやっていけば、塾代も非常に節約できます(但し6年生の夏期・冬期は授業のペースを少し上げたほうがいいでしょう)。
テキストについては、ある一定以上の学力があるお子様であれば、夏休みまでは同じものを使っています(もっとも何校も受験をするお子さんもたくさんいます)。その後はお子様の状況によって最適なテキストで進めていきます。ちなみに埼大附属の主要科目以外の4科対策は11月頃(お子様によって多少前後します)から始めます。なお体育の試験は実技だけですので、塾では対策はしていません。
最後に…
学校の「魅力」と「欠点」は紙一重です。例えば埼大附属には高校はありません。せっかくがんばって入ったのに、また3年後には受験をしないといけません。「そんなところをわざわざ受けなくても…。」というのも一つの考えでしょう。しかし、この学校には素晴らしい進学実績があります。とにかく生徒が真面目で皆本当にがんばります。そういった環境のなかで多くの生徒が飛躍的に成績を伸ばしています。これは他のどこの中学にもない魅力といえるでしょう。
いろいろと書きましたが、入試のことなどでご相談等がございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。ここに書ききれないことも含めていろいろとお話できることと思います。ちなみに当塾の授業料は、受験コースで月額14,710円~(税込)です。